マジシャン・陸海空・カーレース・冷凍庫
今日は「プレステージ」と「ダンケルク」という二つの映画を観た。どちらもクリストファー・ノーラン監督の作品で、どちらも人が溺死する。
「プレステージ」は、二人のマジシャンが深い憎悪を胸に互いを蹴落とし合うサスペンス。「マジシャン」と「憎悪」って一番遠いと思っていた。物語に登場する大半のマジックに対してその場で「種明かし」がされる分、物語のキーとなるマジックのトリックがどういう仕組みなのか全く理解できなくて、マジで魔法なんじゃないかと思った。終盤の種明かしは一瞬「突拍子なさすぎるだろ」と思ったが、思い返すとそこかしこに伏線が張られまくっていて、ただただ脱帽。それから、流石に現実的でないトリックの部分を実在の発明家「テスラ」の名を出すことで無理やり現実に引き込むの、すごいと思った。
「ダンケルク」は、第二次世界大戦でのダンケルク大撤退(英や仏などの連合軍が、独軍に包囲されたダンケルク海岸から撤退する)を描いた映画。映画はそれぞれ「陸(海岸)」の兵士の視点で進む1週間と、「海」の民間船の視点で進む1日と、「空」の空軍パイロットの視点で進む1時間で構成され、映画が進むにつれてそれらがリンクするようになっていく。めちゃくちゃよくできてるし、やっぱりノーラン監督は時間が好きなんだな。物語は3分割されているわけなので当然と言えば当然、ドラマに欠ける点はあるけど、戦場への臨場感とか映画全体の見せ方がすっっごいよかったので、そういうところで満足。あと、一番最後の、なにかしらの含意を感じる1カットがなんか好き。
今更気づいたけど、ノーラン監督って同じキャストを繰り返し起用するんだ。
そう気づいて思い返すと、今まで観たノーラン映画のキャラクターたちがカチカチカチと見事にリンクしていって、なんか爆笑してしまった。
あと、一昨日は「フォードvsフェラーリ」を観た。めっちゃおもしろかった。
僕は、ピクサーの「カーズ」を繰り返し繰り返し、DVDのケースがボロボロになるまで繰り返し観て育った少年だ。しかし、CGアニメーションのカーレースを脳に焼き付けまくっておきながら、この映画を観るまで、本物のカーレースというのがどういうものなのか知らなかった。
本物はすごい。レースカーってすごい。タイヤが回転している。マシンに付いた砂や泥の荒々しさ。爆音を出しながら、畏怖すら感じる速さで風の如く走り過ぎていく。レースカーというのは、こうも暴力的な代物だったのか、と、心が感動に打ち震えた。そして、脳に焼きついたカーズの記憶とそれらを照らし合わせたとき、かくも荒々しいカーレースを、あそこまでコミカルに、けれどもレースの魅力を損なわずに描いたカーズもすごいと感服した。またカーズ観よう。クロスロードを観よう。
フォードvsフェラーリはすごい。本当に観た方が良い。
「Alice in 冷凍庫」という曲のことをふと思い出したので、聴いた。
この曲を聴いて僕がしばしば思い浮かべるのは、雲ひとつなく冴え渡った青空の下、南極大陸を裸足で駆け回る自分の姿だ。そのイメージは、曲に付いたこの素晴らしいイラストの影響だけで出来上がったものではないと思う。曲そのものが、僕にそういうイメージを浮かばせる力を持っている。未だにそのイメージが頭に浮かぶことを確認して、僕はうん、うん、とうなづいた。