こんちは。いももすです。
昨日、この記事を書いた後、部活で使った弁当箱を洗おうと思ってカバンをひっくり返すと、部活の同級生がくれた梅風味のおかきが落ちてきました。そういえば前の日に貰ったきり食べてなかった。
親知らずを抜くと、しばらくはおかきなんて固いもの食べられないだろうな。今のうちに食べてしまおう。それを食い納めにして親知らずを抜くことへの決意を固めようじゃないか。
ペリリと袋を破き、小さなおかきを一つ取り出し口の中へ入れ、バリバリと食いました。
あんま好きな味じゃなかった。
変な諦めの笑いが込み上げてきた、抜歯前日の夜でした。
抜歯当日、つまり今日、朝目覚めた時から僕の頭の中には終始「親知らず」が渦巻いていました。常に重いものがのしかかっている感覚。
何年か前に邪魔な歯を抜きに行ったことがあり、それがはじめての抜歯でした。怯えながら行ったものの、ぐぅぅぅぅぅううう ぽんっ「はい、終わったよ」と言われ、「へぇあ!?」と拍子抜けした声を上げて先生に笑われた記憶があります。今回もそう終われ、そうであれ、と願うばかりでしたが、そうでないことはわかっているのです。もう経験済みなのです。
大学病院に着き、でかいながい白い病院の廊下(ホワイトマイル?)を進み、椅子に座って体感10秒で名前が呼ばれました。
たくさんの道具が置いてあり、たくさんの患者や医者がいて、思ったよりゴチャゴチャしている診療室の一角の椅子に案内されました。椅子に座ることを指示された時、まさに「観念」と言うほかない感情が僕の中に渦巻き、「フゥーーーーーーッ」と椅子に腰掛けました。まるでスローモーションのような感覚。
兄さんが「まぁ前とおんなじなんで」と言ってくれましたが、前と同じだから問題なんだよお兄さん・・・。
「まぁ前と同じように一週間くらいは痛いかな」
フゥ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ
まぁ、これが終わればメインの痛いのは終わりなんで。あとは腫れと痛みが引くのを待つだけなんで。
そう思った時、お兄さんから衝撃の一言が発せられました。
「縫い糸は一週間くらいしてから歯医者で取ってもらって」
・・・ぬいいと???
そのとき、僕の記憶の引き出しの「親知らず関連」のところから、隅に横たわって見えなかった一つの記憶が現れました。
親知らず抜いたとこって、縫うんですよ。
糸ってもちろん抜かなきゃいけないんですけど、この抜くのって激痛を伴うんですよ。伴ったんですよ前。
つまりこの抜歯は、最初で最後の試練なのではなく、試練の間の入り口でしかなかったのです。
完全に希望の拠り所を失った僕は、バレないほどの小刻みさでカタカタと震えていました。
「麻酔するけど、これはチクッとするから鼻で深呼吸しといてな」
いつの間にか二人に増えていた兄さんが注射器を持ち、椅子は倒され、僕はなすすべも無く「ンフーッ ンフーッ」と荒い鼻呼吸をするしかありませんでした。
歯茎に激痛。歯茎を中心にして頭全体に電気が走ったかのような数秒の激痛。激痛の痛みはやがて麻酔の痺れに変わっていき、口の中の感覚がよくわからないことになりました。一旦椅子が起き、「麻酔が回るのを待つんで」と言われました。うがいをすると口の端からぴゅーっと水が出て「麻酔あるあるだ」と思いました。
椅子にボーッと座っていると、兄さん方の会話の声が聞こえてきました。「試験官してたんだけど」「女の子のとこの」「記述は空欄多かったけど穴埋めは結構できてんだよね」「あそこの女の子真面目よな」みたいな。
その会話今・・・まぁ、リラックスさせる的なあれもあったりするなら別ですけど・・・その会話今・・・いる!!??
かくして抜歯が始まりました。
前と同じく青い布を顔に被せられ、硬いなんか金属質な太い棒みたいなのを口に入れられ、ギュィィィィィィィィィイイン!!!!!キュィィィィィィィィィイイイン!!!!!!!MOTHER2のギーグ戦に巻き込まれたと言われても、この音なら違和感ない。
「痛みとか大丈夫ですか?」
「はぇ」
麻酔が効いているので、具体的にどんなことが行われているのか把握できません。ですが、こう、歯をグーーーーーーーーーーーーーッと強い力で押さえつけられれば、それは痛みとかとは別の感覚でわかります。麻酔効いてても顎は外れるものじゃないでしょうか。めちゃくちゃ血の味がしました。
「麻酔追加しますね」
そういって新たに麻酔の注射が施されました。どのように刺したのか、めちゃくちゃ痛かったです。なんで?麻酔効いてんじゃないの?痛すぎて
「ン゛ア゛ッ」
と思わず汚い声が出てしまいました。
麻酔が追加されるってことは、今までの麻酔を貫通するくらいの痛みがやってくるような治療を今から施すってことですかァーーーーッ!!?と恐怖に歪んだ表情をしながら、浮かんだやばい想像をかき消しかき消し耐えました。
唾液か何かで濡れた、硬くてぶっといのが出し入れされるたびに意識が遠いところに行くようでした。
この文章を施術され中にふと思いつき、自分のドスケベさに笑いが込み上げましたが、普通に麻酔とか治療中とかの関係で笑えませんでした。悲しいスケベ。
さて、いよいよ終盤。歯を抜く(正確には砕いて取り出す)作業は終わり、縫い合わせる作業に入りました。さっき切ったばっかのとこに針を出し入れする作業です。これが痛いんですよ。麻酔関係なく針って痛いんですかね。
兄さんたちの雑談(縫合しながら)「実家は医者だっけ?」「いや実家は普通にあれなんすけど」「あー・・・やっぱ開業とか・・・」「まぁそうですね、ゆくゆくは開業したいとは」
やっぱり兄さん達くらいになったら将来のこともいろいろあるんだろうなぁ、まぁもう大学病院に勤めてるくらいだしなぁ・・・。やっぱ僕もなんか進路のことは考えとかなきゃなぁ・・・。
まさか、親知らずの傷口の縫合をされながら進路のことを考える羽目になるとは思いませんでした。いろいろ痛い。
「痛み大丈夫ですか?」
「へぁ」
縫合と進路の激痛に耐えたら、視界を覆っていた青い布を外され、まるで夢から覚めたような感覚がしました。これでおしまい。お兄さんが僕のかかりつけの歯科に「糸抜き要請」の手紙を書くのを待ち、その後保冷剤と抜歯後数日のルールが書いた紙を持って出ていき、会計を済ませ、薬局でしばらく待って痛み止めと化膿止めの薬を受け取りました。薬局のテレビではヒルナンデスでスイカのハンバーガーが紹介されてました。本当に美味しいのかな。
しかしさっきも言いましたが、試練の間の扉は開いたばかりなのです。
常に訪れるズキズキ、口の奥を糸で縫っている違和感、口内の抜歯してない側だけで食べろという食事(無理)(食った気しない)(患部に当たったらもちろん痛い)(おかきはおろか鶏肉食うのもしんどい)、その苦しみと戦いながら、糸を抜いて完全に解放されるまでの一週間を過ごさなければいけないのです。夏休みの貴重な一週間を・・・。
半ば冗談的に書いた記事でしたが、誇張的に現状を分析して書いた結果、今絶望感がやばいです。バカか。
これ読んだ人は親知らず抜くことへの恐怖心がすごいことになっているでしょうが、まぁ、僕と一緒に強く過ごしましょう。
【追記】糸を抜くのに激痛は伴いません。